EXHIBITION

クリエイションの未来展 神馬啓佑+宮田彩加+山上渡「スピリチュアル・イマジネーション」

開催概要

名称:
「クリエイションの未来展」第9回 清水敏男監修「スピリチュアル・イマジネーション 神馬啓佑+宮田彩加+山上渡」
期間:2016.09.08(Thu) - 2016.11.28(Mon)
会場:LIXILギャラリー
住所:東京都中央区京橋3-6-18 東京建物京橋ビル
企画:LIXILギャラリー
制作:株式会社LIXIL

アーティスト

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LIXILギャラリーは2014年9月より、新企画「クリエイションの未来展」を開催します。日本の建築・美術界を牽引する4名のクリエイター。清水敏男(アートディレクター)、宮田亮平(金工作家)、伊東豊雄(建築家)、隈研吾(建築家)を監修者に迎え、それぞれ3ヶ月毎の会期で、独自のテーマで現在進行形の考えを具現化します。

2016年は「スピリチュアル・イマジネーション」展を開催。
不穏で不透明な現代社会において、生きるために人々はあらゆる可能性について想像力を巡らせています。また、ものづくりにおいても想像力や閃きはその源となります。本展では想像力と霊性(スピリチュアル・イマジネーション)をテーマに制作をする同時代の若手作家 神馬啓佑、宮田彩加、山上渡の3名の作品を展示します。

 

「スピリチュアル・イマジネーション 想像の霊性」

芸術の本質は霊性にある。霊性とは限りある時空を生きる人間が憧れる非物質的で普遍的な領域にかかわることである。

非物質的で普遍的な領域の存在についての思いは、おそらく人類が記憶を書き記すことを始める以前からあった。先史時代の土偶、洞窟壁画など多くの遺品は人類がそうした領域の存在を想定していたことを語っている。やがて人類は複雑な文明を築いていくのだが、たとえばエジプトに現れた文明が残した膨大な建築、絵画、彫刻類はそうした領域の存在にかかわるものだ。日本の縄文以来の土器類、埴輪もそうした領域の存在を想定している。

プラトンは「感覚される領域と思考(あるいは直知)される領域を区別して、後者を前者よりも実在性の高いものとみなした。例えば目に見える美しい色や形は感覚領域にあるが、美しさそのもの(美のイデア)は思考領域にある」(水地宗明『新プラトン主義を学ぶ人のために』p.10)と考えた。この考え方はプロティノスの新プラトン主義を生み西欧の思考に多大な影響を与え続けたが、20世紀の西田哲学(『善の研究』)に連なると同時に西田ではアジアで生まれた思考も大きな影響を与えている。西田はそれを「無」と考えた。

人類誕生の初期からそして地球上のさまざまな場所で、非物質的で普遍的な領域の存在を想定することは人類の主要かつ重要な思考となってきた。そうしたことが世界各地でおこなわれ、それが現在まで続いていることは1989年の展覧会『大地の魔術師たち』(ジャン=ユベール・マルタン、ポンピドゥーセンター)が明らかにした。

芸術は物質によって成り立っている。我々はその物質性を楽しんでいる。美しい線、巧みに選ばれた色彩、その塗り方の絶妙さを愛でないものはいないだろう。磁器の名品に溢れる品性、なめらかな表面の輝き、もしくは艶消しの陰影を眺めてしばし時を忘れる。しかしそうした物質への賛美はそこで止まるものではない、と考えることは自然なことだろう。現象の背後には何か時空を超えたものがある。それは人類が長きにわたって考えてきたことなのだから。

ところでその背後にある何か共通した価値を探ることは実は美術界では今重要な課題であると思う。それはまず、マルセル・デュシャンが感覚的な手仕事と思考領域(コンセプト)を明確に分けたことに端を発する問題、『大地の魔術師たち』が提議した問題などに加え、この日本において「美術」ということばの定義が、日本が過去数百年発展させてきた「美術」の概念と齟齬をきたしていること、20世紀後半に日本では「美術」が「アート」ということばに置き換わった問題、「アート」がエンターテインメントと区別がつかなくなっている問題など未解決案件が山のようにあるのだ。

最近、非西欧の「アート」を対象としたフランス国立ケ・ブランリ美術館元館長ジェルマン・ヴィアットとこの問題について話しあう機会があった。ヴィアット元館長は同館での民藝の展示を通じて深く思考する機会を得たという。非西欧文化圏にある日本の民藝の概念と西欧の「美術」の概念をどのように接続することが可能か、もしくは人類の創造を包括できるより大きな概念は可能か、という問題である。

私はそこに非物質の霊性(スピリチュアル)に関する想像力について想起せざるをえない。人類はもともと霊性を求めることを連綿と行ってきたのだから。

本展覧会では三人の作家、神馬啓佑、宮田彩加、山上渡が霊性と想像力について考え、作品を制作し、キュレーターとともに展示を通じて表現することを目指している。

西欧近代文化は視覚に偏執的こだわってきた。それは17世紀のガリレオ・ガリレイやデカルト以来、理性へ過剰によりかかってきたことが原因だ。しかし三名の作家はそうした状況に対してごく自然の成り行きでそれとは異なった思考を示している。霊性という非物質領域との関わりが芸術の本質であり、世界の「アート」を包括的に定義してくれる概念ではないかと予感している。本展覧会はその一歩である。(清水敏男)

 

 

関連企画
トークイベント 清水敏男×神馬啓佑×宮田彩加×山上渡
2016年10月3日(月)18:30-20:00

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撮影 : 山上洋平