ART AND CITY

Miyashita Park

このたび新装した渋谷区立宮下公園(以下、宮下公園)に彫刻を3点設置しました。
山手線の西側に連なる渋谷、新宿、池袋は性格の違いが際立っており、それぞれが個性的な新しい文化の発信拠点になっています。
渋谷が生み出し続けて来たものは何と言っても若い文化です。渋谷に隣接してあったワシントンハイツから入って来たアメリカ文化、横浜方面からの文化、井の頭公園方面からの西東京の文化、銀座線が運んでくる銀座や青山の文化が混在し進取のパワーに満ちた強力な魅力を生成してきました。
そうした「まち」に出現した新しい宮下公園のアートは渋谷の歴史と文化を視覚的というよりも身体的に感じさせるものがふさわしいと考えました。渋谷の「まち」のエネルギーはストリートを歩き雑踏に身を置いた時に身体に響いてくるからです。
宮下公園にはストリート文化を支えるスポーツ施設が開設されています。一番高いところに設置された『YOUwe.』(WA!moto “Motoka Watanabe”)は文字通り身体をつかってのみ到達できる場所にあり、「より高みにおいで」と人々を誘います。
渋谷といえば忠犬ハチ公です。渋谷駅方面の入口前に置かれた彫刻『きゅうちゃん』(Colliu)は線路をはさんで反対側に鎮座する『忠犬ハチ公』の遠い親戚です。名前は「ハチ」の子孫であることから「キュウ」(宮は宮下公園から)と言います。ポップな色彩と形態は渋谷の雑踏に負けない強烈な個性を発しています。
明治通り沿いに立つ彫刻『Any』(Stone Designs)はピクトグラムを思わせる男女像です。よく見ると男女が組み合わさり一体化した身体になっています。渋谷がジェンダー、年齢、国籍、民族などの違いを超えて人々が集まり新しい文化を作っていくことを象徴する彫刻となっています。
新しいまち、新しい公園が開場したその日から人々が集う場所となるには、既存のまちのストーリーの延長と新しいヴァリューが必要です。そのいずれも一瞬にして同時に満たすことができるのがアートです。
これまでの渋谷のストーリーを継承しながらアートが全く新しい文化を生む契機となれば幸いです。

アーティスティック・ディレクター
清水敏男

建築概要

竣工年: 2020
施主: 東京都渋谷区神宮前6-20-10
設計: 株式会社竹中工務店
施工: 株式会社竹中工務店
アートディレクター: 清水 敏男
アートコーディネート: トシオシミズアートオフィス