熊文韻(通称、小熊シャオション)は色彩のアーティストです。もともと色彩豊かな絵を描いた熊文韻は1990年代のなかばにはモノクローム(単色)の絵を描くようになりました。やがて色彩はギャラリーや美術館から外に飛び出します。モノクロームの三角形の小さなバナー(旗)を街路や建物に張りめぐらし、日常の光景にレインボーカラーの色彩を与えることをめざすようになりました。
こうして街で活動する一方、熊文韻はチベットで壮大な構 想を実現しました。チベットは熊文韻が文化大革命時代に下放されていた大地です。そこにレインボーカラーの色彩を展開させるべく、幌をレインボーカラーに染めあげたトラックがコンボイを組み、荒涼とした大地に色彩を与えるパフォーマンスを実現したのです。さらに行く先々で家のドアに色彩を塗ることでチベットの人々の生活、風景を自分の作品とするパフォーマンスも行ないました。その意図するものは、色彩を通じて社会そして自然と人間存在を結合させることである、と熊文韻は述べています。21世紀は人間と人間、人間と自然が調和して欲しい、戦いでなく調和が重要である、と熊文韻は考えます。レインボーカラーはその願いを象徴するものです。
この展覧会では昨年行われたチベットでのレインボーカラー大作戦『流動彩虹』の紹介と新たな展開の作品『空空(コンコン)』を発表しました。『空 空』はクローン時代の新しい生き物です。動物でもなく人間でもないレインボーカラーの7人の『空空』は私たちの日常に入り込み、私たちの日常を変えていくことでしょう。